オプティム(3694)が2026年8月に、2027年3月期第1四半期決算を発表しました。
今回の決算は一見すると、売上高が前年同期比58.2%増というかなり派手な内容です。
ただ、詳しく見てみると、単純に「売上が急成長した」というだけではありません。
今回の決算から、現在のオプティムには大きく分けて、
「稼ぐAX事業」と「育てるアグリテック事業」
という2つの役割があることが、かなりはっきり見えてきました。
今回は、以前の記事「オプティムは何で稼いでいる?AI企業の本当のビジネスモデルを解説」の続編として、最新決算からオプティムの現在地を考えてみます。
まずは2027年3月期1Qの決算
今回の主な数字は以下の通りです。
| 2027年3月期1Q | 前年同期比 | |
|---|---|---|
| 売上高 | 33.4億円 | +58.2% |
| 営業利益 | 3.7億円 | +38.4% |
| 経常利益 | 3.0億円 | +29.4% |
| 純利益 | 1.5億円 | +40.9% |
売上・利益ともに大幅な増収増益です。
数字だけなら、かなり良い決算だと思います。
ただし、売上高が58%も伸びたのに対して営業利益の伸びは38%です。
営業利益率も前年同期の約12.8%から、今回は約11.2%へ低下しました。
なぜこれほど売上が伸びたのに、利益率は下がったのでしょうか。
その理由を理解するには、AX事業とアグリテック事業を分けて見る必要があります。
「稼ぐ」AX事業
まずオプティムの現在の収益基盤になっているのがAX事業です。
AXとは「AI Transformation」の略で、AIを活用して企業や社会の業務を変革していくという考え方です。
オプティムでは、
- 情シスAX
- オフィスAX
- コミュニケーションAX
- 医療AX
- 建設・土木AX
など、さまざまな分野へサービスを展開しています。
今回のAX事業は、
売上高:前年同期比+5.9%
営業利益:前年同期比+15.0%
となりました。
売上の伸び以上に利益が伸びています。
全社の売上+58.2%と比較すると地味に見えるかもしれませんが、私はむしろこちらの数字を評価しています。
ストック売上比率は86.4%
以前の記事でも触れましたが、私がオプティムを評価している大きな理由が「ストック性」です。
今回のAXサービス売上は約20.8億円。
そのうちストック売上は約18.0億円で、
ストック売上比率は86.4%
となっています。
つまり、毎年ゼロから売上を作り直すビジネスではなく、既存顧客からの継続的な利用料が売上の大部分を占めています。
ストック売上自体も前年同期比で約6.2%増加しました。
これはオプティムを長期で見るうえで、かなり重要な数字だと思います。
OPTiM Bizだけではない
オプティムの代表的なサービスといえば、企業のスマートフォンやPCなどを管理するMDMサービス「OPTiM Biz」です。
今回もOPTiM Bizを中心にライセンス数は増加しています。
ただ、今回もう一つ注目したいのは、OPTiM Biz以外にも、
- OPTiM AIホスピタル
- OPTiM 文書管理
- 自治体公式スーパーアプリ
- Support & Growth Portal
などのサービスが成長していることです。
これまでのオプティムは、
「OPTiM Bizという強いストック事業を持っている会社」
という印象が強かったのですが、少しずつ第2、第3のストック型サービスが育ってきています。
これが今後どこまで大きくなるのかは注目したいところです。
「育てる」アグリテック事業
そして今回の決算で最も驚いたのがアグリテック事業です。
前年同期の売上高は約0.7億円でした。
それが今回は、
約11.7億円。
前年同期比では、なんと**+1,661.8%**です。
今回の全社売上+58.2%という急成長の大部分は、ここから生まれています。
農業が「実験」から「事業」になってきた
オプティムは以前から、
- 農業用ドローン
- AIによる病害虫解析
- ピンポイント農薬散布
- スマート米
など、農業分野へ積極的に投資してきました。
ただ、これまでは「将来性はありそうだけれど、本当に大きなビジネスになるのだろうか?」という印象もありました。
今回、売上が11億円を超えてきたことで、その見方は少し変わってきたように思います。
ドローンによる農薬散布だけでなく、肥料散布や遮熱・遮光剤散布など用途を拡大。
さらにスマート農業で生産した農作物の流通・販売にも取り組んでいます。
まだ利益にはつながっていませんが、農業が研究開発的な取り組みから、本格的な事業へ移行し始めていることは今回の決算から読み取れます。
ただし、アグリテック(農業とテクノロジー)はまだ赤字
ここは冷静に見ておきたいところです。
アグリテック事業の営業利益は、
約▲1.7億円
でした。
売上が11.7億円まで急拡大しているにもかかわらず、まだ利益は出ていません。
これだけを見ると少し心配になります。
ただし、前年同期と比較すると違った景色も見えてきます。
前年同期は、
売上約0.7億円に対して営業赤字約1.4億円
でした。
営業利益率にすると▲200%を超える状態です。
今回は売上11.7億円まで拡大しながら、営業赤字は約1.7億円。
営業利益率は▲14%程度まで改善しました。
つまり、
赤字額そのものはまだ残っているものの、売上規模に対する赤字の割合は大幅に縮小しています。
これは結構重要だと思います。
農業が黒字化すると面白くなる
今期のアグリテック事業について会社は、
売上高38.0億円
営業利益▲3.5億円
を計画しています。
まだ通期でも赤字予想です。
ただ、前期の営業赤字約4.6億円からは改善する計画となっています。
現在のオプティムを単純化すると、
AX事業で利益を稼ぐ
↓
その利益をAIやアグリテックなどへ投資
↓
アグリテックの売上規模を拡大
↓
将来的な黒字化を目指す
という構造になっています。
この流れが成功して、アグリテックが損益分岐点を超えてくると、オプティム全体の利益成長がもう一段加速する可能性があります。
ここは今後の決算で最も注目したいところです。
なぜ今期の営業利益予想はほとんど増えない?
ここで一つ疑問があります。
これだけ売上が伸びている会社なのに、2027年3月期の会社予想は、
売上高129.8億円(+10.6%)
営業利益19.8億円(+0.5%)
となっています。
営業利益はほぼ横ばいです。
これだけを見ると、
「オプティムの成長は止まったのでは?」
と思ってしまいます。
しかし、会社は現在、
- AI開発への投資
- 人材採用
- 賃上げ
- アグリテックへの投資
などを積極的に行っています。
つまり今期は、利益を最大化することよりも、
将来の成長のために投資する年
と考えた方がよさそうです。
もちろん、投資したからといって必ず利益につながるわけではありません。
だからこそ今後は、アグリテックをはじめとした新規事業が本当に利益を生み始めるのかを確認する必要があります。
今回の決算でオプティムの姿が見えやすくなった
今回の決算を見て、私自身、オプティムという会社が以前より分かりやすくなったように感じました。
これまでは、
MDM、AI、ドローン、農業、建設、医療……。
いろいろなことをやっていて、少し事業内容が分かりにくい会社でした。
しかし現在は、
稼ぐ事業
AX事業
- ストック売上比率86.4%
- 営業利益+15.0%
- OPTiM Bizを中心に安定収益を確保
育てる事業
アグリテック
- 売上11.7億円まで急拡大
- まだ赤字
- 将来の第2の収益源候補
という構図がかなり明確になってきました。
今後チェックしたい3つの数字
今後のオプティムの決算では、私は特に次の3点を確認していきたいと思います。
① AX事業のストック売上
今回約18億円だったストック売上が、今後も5~10%程度の成長を続けられるのか。
② アグリテック事業の営業赤字
売上高よりもこちらを重視したいと思います。
売上が30億円、40億円と増えても赤字が続くのであれば評価しにくくなります。
逆に売上拡大とともに赤字が縮小し、損益分岐点が見えてくれば評価は大きく変わります。
③ 新しいストックサービスの成長
OPTiM Bizだけではなく、AIホスピタルや文書管理などが第2、第3の柱になれるか。
ここが長期的にはかなり重要だと思います。
まとめ
今回の決算は、
「良い決算。ただし農業の黒字化を確認したい」
と評価します。
売上+58.2%という数字は非常に目立ちます。
ただ、私が今回評価したいのはそこだけではありません。
むしろ、
AX事業のストック売上が約18億円まで積み上がっていること。
そして、
アグリテックが売上11.7億円という無視できない規模まで成長したこと。
この2点です。
一方で、アグリテックはまだ赤字です。
今後、売上拡大とともに赤字が縮小し、黒字転換が見えてくれば、
「安定して稼ぐストック型AX事業+成長するアグリテック事業」
という、かなり面白い企業になってくる可能性があります。
オプティムはすでに利益を出している会社です。
その利益を使って次の柱を作ろうとしている。
今回の決算を見る限り、その「次の柱」が少しずつ形になってきたように感じました。
次回以降の決算では、売上高の伸びだけではなく、アグリテックの赤字がどこまで縮小するかを特に注目していきたいと思います。


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